アリストテレス『生成と消滅について』(西洋古典叢書, 池田康男 訳)第1章レジュメ 

第1章 一元論者と多元論者  エンペドクレス説に対する批判

主な内容:アリストテレス以前の哲学者たちの生成と消滅に関する理論に対する批判的検討

ⅰ生成と質的変化を同じと考えるのか、異なると考えるのか
    

アリストテレスの仮説:

・多元論を前提とする場合⇨異なる

(多元論者:エンペドクレス、アナクサゴラス、レウキッポス等)


 →生成と消滅はすでに質が異なる複数の種類の元素の結合と分離だと考えられるので、質的変化は伴わないということになる。

一元論を前提とする場合⇨同じ

一元論者:タレス、アナクシメネスディオゲネス等)

→一つのものから様々な質を持つ全てのものが生じると考えるため、生成は必然的に質的変化を伴うということになる。

 

アナクサゴラス:

・多元論者だが生成を質的変化と同じだとみなす
アリストテレスは「自分の言っていることをわかっていない」と矛盾を批判
   
エンペドクレス:

・多元論者であり、生成は質的変化と別物だとみなす。
・4元素と、4元素の結合と分離の動因であるところの「愛」と「争い」があると考えた。愛」と「争い」も元素に含めて、宇宙(全てのもの)は6つの元素で構成されているとする。

・エンペドクレスの4つの宇宙周期:エンペドクレスは宇宙には4つの周期があると考えていた。その第一段階では、「争い」は存在せず、「愛」の結合力によって全ての元素が一つに結集して球体をなすとされる。

                

アリストテレスのエンペドクレス批判
   
 

 

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エンペドクレスの宇宙周期の第一段階①アリストテレス解釈(イメージ) 

アリストテレスは、エンペドクレスの宇宙周期の第一段階であるところの4元素が結集した球体について、一切のものがひとつに融合していて4元素が渾然一体となっている状態だと考えた。(※そう考えなくてはならない根拠があるわけではなく、誤解とされる)                   

→上記の解釈のもとでは、渾然一体となった状態から再び元素が生じなくてはならないことになるので、アリストテレスは、エンペドクレスの「元素たちのどれひとつとして一方から他方が生じるのではないが、しかし、他のすべてのものは元素たちから生じる」という主張は矛盾していると指摘。

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エンペドクレスの宇宙周期の第一段階②4元素が「愛」の結合力によって結集してもなお他のものには還元されないまま保たれるという解釈(イメージ)