アリストテレス『生成と消滅について』(西洋古典叢書, 池田康男 訳)第2巻第2章まとめ
第二章 第一の反対性質、熱と冷、乾と湿
テーマ:感覚される物体、触れられうる物体の始原とは何か
●触覚に応じた反対対立のみが形相や始源である
→第一物体は触覚の対象である反対対立によって互いに異なるから
→白さ⇄黒さ、甘さ⇄苦さなどは触覚の対象ではないので違う
・視覚は触覚よりも先である(たいていの場合は触れるより先に目に入るということなのではないか。)
→したがって、「視覚の対象」は「触覚の対象」よりも先
→しかし、「視覚の対象」(この「対象」は見える物体そのものを指していない。「視覚の対象」は現代科学の例で置き換えて「物体が反射する光」などというふうに捉えるとわかりやすいかもしれない。)は触れることが可能な物体の属性。「視覚の対象」が触れることが可能な物体の属性なのは、その物体が触れることが可能だからというわけではない。その前に視覚の対象を属性としてもつ何ものかがある。(ものがあるということと、それが見えたり触れたりすることを区別している。)
→対して、「触覚に応じた反対対立」は「触覚の対象」すなわち触れられうる性質そのもの(おそらく)
●触れられうる性質そのもののうち、いかなるものが第一の差異なのか
触覚に関わる反対対立
熱⇄冷 乾⇄湿 重⇄軽 硬⇄軟 粘⇄脆
「ぎざぎざ」⇄「なめらか」
「きめの粗い」⇄「きめの細かい」
・このうち重⇄軽は作用をなしうるものでもなく、作用を受けるものでもない
・「きめの粗い」⇄「きめの細かい」、硬⇄軟、粘⇄脆および他の触知される差異は乾⇄湿から発生する。
→きめの粗いもの(Ex. 小石)で容器を充填すると隙間ができてしまうが、きめの細かいもの(Ex. 砂)なら「湿」の性質をもつもの(Ex. 水)と同じく容器をくまなく充填可能なので「きめの細かい」は「湿」に対応。「硬⇄軟」、「脆⇄粘」も同じく「乾⇄湿」に対応し、下属する。(「乾⇄湿」の対立する性質を、他の対立する性質に投影したアナロジー関係になっている)
・熱⇄冷は乾⇄湿に対応せず、還元されない。
◎ゆえに、他の諸々の差異はこれら4つの、乾⇄湿と熱⇄冷へ還元される。これら4つはもっと少ないものへ還元されることはない。
*反対対立とは
→形相とその欠如。単なる性質ではない。(註より)
→2-1 329a 「感覚されうる物体には何らかの質料があり、しかしそれは離れてあるものではなくて、いつも反対対立とともにあり、いわゆる諸元素はその質料から生じるのである」
→熱さや冷たさなどが反対対立
※色字はhannasaitoの解釈、意見